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まず、みんなびっくりしたと思うけど、第1図は途中図じゃない。これが対戦の開始局面なんだ。J-Chessはふつうの将棋と同じ並べ方をする「フリーモード」と、J-Chess特有の開始局面を持つ「パターンモード」の二種類のはじめ方がある。
なぜそんなルールにしたかというと、将棋の強い人が、最初からJ-Chessも強かったらつまんないじゃない。だから、将棋では実際にありえない場面からスタートしてみようってことにしたんだ。
パターンモードはこれひとつじゃないよ。今回の形は4人全員で相談して決めたんだけど、今後は森の案内人ひとりひとりに、個性的なパターンモードを考えてもらうつもりだ。
だけど、ふと思ったんだけど、こんな形がほんとうに将棋の世界に現れたらすごいよね。
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記念すべき1号局はタクリンとハタルの決戦だ。先手がタクリン、後手がハタル。タクリンはクイーンを持ってレインボー城を守り、ハタルはキングを持ってオーロラ城を守る。そして、タクリンは相手のキングを、ハタルは相手のクイーンをキャッチすれば(詰めれば)勝ちだ。
戦いをはじめる前に、校長のキラット先生に、このパターンモードの戦い方の急所をうかがってみよう。最初は慣れないかもしれないから、将棋流のコマの呼び方もいっしょに書いておくね。
キラット「今回のパターンモードの急所ですが、初形でクイーン/キング(王)とイーグル(飛)がいきなり密着しているために、その上部、つまり5筋が当然ながら大事です。フォックス(銀)やディア(桂)が主役のコマで、どうやらクイーンやキングを囲うゆとりはなさそうな感じです。
相手の陣地の真ん中、つまりクイーン軍団はオーロラ城の53に、そしてキング軍団はやレインボー城の57にスーパーキャラ(成り駒)やワーカー(歩)が利く展開になれば、有利に戦えるでしょう。いずれにせよ、短期決戦になる形ですね」
みんな、キラット先生の言っていることがわかったかな。53とか57という数字は、盤上でどこのマス目なのか、その位置を表わす記号なんだ。十の位の数字がヨコの並びで、一の位の数字がタテの並びになる。だから開始時点でクイーンは59、キングは51にいることになるね。
じゃあ、いよいよ戦いに入っていこう。
日本初のJ-Chess決戦
先手レインボー城:タクリン・ノリック
後手オーロラ城 :ハタル・ハッテーナ
(持時間 なし。一手3秒以内)
日時:2001年2月24日(土)
対局場:東京渋谷インフォスタワー「藝神の間」
正立会人:キラット・アルシマーニ
副立会人:ピカリス・ヤスキッチ
記録係:パラパ・タッチー
[第1図からの指し手]
▲56ワーカー(歩) △14ワーカー ▲76ワーカー △15ワーカー
将棋だと▲76歩か▲26歩が常識的な第1手だけど、その▲26歩と同じ感覚で、タクリンの初手は▲56ワーカー。パターンモードを採用するJ-Chessならではの幕開けだ。
これに対してハタル長老は、なんと△14ワーカー!
キラット「△14ワーカーは長老の貫禄でしょう」
――はあ……そんなもんですか。もしかして長老のヒネたキャラが出ただけの一手では?
キラット「長老に対しては、そういう不謹慎な発言はできないのがヌフヌフの森の掟です。繰り返しますが、これは長老の貫禄です」
――では、初手▲56ワーカーに△14ワーカーは、この形のパターンモードで、定跡(じょうせき・模範的な戦い方のこと)になると。
キラット「いえ、これから定跡が整備されてくれば、2手目は△54ワーカーや△34ワーカーが主流になってくると思われます」
――ということは、やはり△14ワーカーは奇をてらいすぎなわけですね。
ハタル「うるさいんじゃよ!」
――対局中の本人が怒ってきましたので、先へ行きます。タクリンは▲76ワーカーと角道……じゃなくて、チータの道を開くために77のワーカーをひとつ上げました。すると長老は、さらに△14ワーカー!
――キラット先生、この連続ワーカー突きはどうなんでしょう。
キラット「余裕ですね」
――余裕!
キラット「はい、将棋界で木村・坂田戦が伝説となっているように、このJ-CHESS草創の一戦も長く語り伝えられることでしょう」
――うーん、うまくまとめましたね。ようするに森の長老には敬意を表せよ、ということですね。
キラット「………」
[第2図以下の指し手]
▲36ワーカー △72パンダ(金)
▲37ディア(桂) △32パンダ ▲77ディア
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しかしすごいのはふたりの指し手の早さだ。一手3秒以内だから当然としても、その猛烈なスピードのやりとりの中で、タクリンは「はい56ワーカー」「それで76ワーカーですね」と、自分で口に出しながらコマを動かしているんだよ。慣れないパラパが記録をとりやすいようにとの配慮だね。自分で棋譜読み上げ係を務める対局者なんて初めてだ。人柄だね。
タクリン「いたみいります」
――それにしても、ディア(桂)の左右の跳ね出しにはビックリですけど、校長先生。
キラット「そうですね。将棋の場合ではフォックス(銀)を2枚中央に繰り出していくと思うのですが、タクリンはディアをぽんぽんと跳ねて一気の中央攻略をめざしました」 |
――それにしても、ディア(桂)の左右の跳ね出しにはビックリですけど、校長先生。
キラット「そうですね。将棋の場合ではフォックス(銀)を2枚中央に繰り出していくと思うのですが、タクリンはディアをぽんぽんと跳ねて一気の中央攻略をめざしました」
ハタル長老はパンダ(金)をじわっと上げてきたけれど、53の地点めざして速攻を仕掛けてきたタクリンにどう対応するんだろう。
ところで、さっきからピカリスが、対局中のふたりの横に立って、じーっと何か考えているんだよなあ。例によって「1億と3手」の高速デジタル思考を働かせているのかもしれないし、もしかしたら、ボード上に飛び交う動物キャラを見て、目が回っているだけかもしれない。どっちかな。