2012年4月9日月曜日

ご報告

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3年前から糖尿病と闘ってきたネコのショコランが、腎機能の悪化により、4月7日夜、8時11分、永遠の眠りに就きました。

17歳と4カ月半の命。

人間に置き換えると85歳ぐらいになりますが、ぼくたち家族の一員としては、いつまでもこどもでした。



ネコの糖尿病治療というのは、人間同様、自宅で状況に応じて一日一回もしくは二回、インシュリン注射を打つことですが、人間のように自分ではできませんから、大半は妻がやってくれていました。

3年前の5月にこの治療がはじまってからは、夫婦で泊まりがけで旅行に出ることは不可能となりました。海外旅行など論外で、東京の娘のところへ行くにしても交替で、ということになります。

長時間の移動はさせられないし、かといって、通常のペットホテルに預けられないのはもちろん、代わりに注射をしてくれる病院に預けてもストレスがかかりますから。

それでも糖尿病に関しては順調に推移して、日帰りで戻ってくるのであれば、ほとんど心配もなく家に残しておける状態でした。なので、大阪や宝塚程度なら、夫婦で出かけられたわけです。



しかし、ことし3月に入ってから、二階にあるぼくの仕事部屋にショコランが上ってこなくなりました。

糖尿ではなく、腎機能が急速に悪化してきたのです。それで脚力が衰え、階段が上れなくなった。

そしてショコランと「つながっている」ぼくのほうも、職業病ともいうべき腰痛がひどくなりはじめ、3月の後半から今月はじめにかけては、最悪の状態でした。



3/20、ぼくの誕生日を一日前倒しでお祝いするために、娘が京都にきてくれていたのですが、その家族三人の前で、ショコランは痙攣を起こして倒れました。

以後、ぼくは自らの腰痛を薬で散らしながら、ショコランに自宅点滴治療を行なうという状況がつづいていましたが、糖尿病治療のためのインシュリンの針と違って、点滴の太い針はショコランの柔らかい皮膚にも明確な痕跡を残し、「う~ん、これをずっとつづけるのかなあ」と思っていました。



でも、点滴によって状況は下り坂から平坦に持ち直し、4月3日、京都を嵐のような雨が襲った日に、ぼくと妻が二階の窓から外の様子を眺めていると、ショコランが階段の三段目まで自力で上ってきて、じっとこちらを見上げているのに気づきました。

それで妻がだっこして二階に連れてきて、しばらく滞在。これがショコランにとって、最後の「仕事部屋訪問」でした。

ここ数年のぼくの作品は、ほとんどショコランが足もとか膝の上にいて執筆をしていたんですけどね。



一昨日―4/7土曜未明、豆電球ひとつにした一階の部屋で、ふと目を覚ますと、ショコランと目が合いました。

その前夜、二度にわたって倒れたので、洋式のテーブルこたつのふとんを前後まくり上げ、そこにペット用ヒーターを置いてショコランをのせ、こたつの両脇にぼくと妻がふとんを敷いて寝ながら、どちらの方向からもチェックできるようにして、こたつのファンヒーターを最弱モードにして暖めてやっていたのですが、そのこたつの中から、じっとぼくを見つめていました。

たぶん、ぼくが寝ているあいだも見つめていたのでしょう。

そして、こちらが起きたのを知ると、必死に立ち上がり、よたよたとした歩みで近づいてきました。

敷き布団の上までくるかな、無理かなと思いながら、手元にデジカメがあったので動画撮影をしながら様子をみていたら、ふとんまで乗ってきました。

それでカメラを止めて抱いてやろうと手を伸ばしたところ、いつもと違って、ふっとUターンをして、お尻を向けて、すぐにふとんから出ていきました。



ぼくが腰痛で最悪状態のとき、ふとんの中から「ショコラン、お見舞いにきてよ~」と呼びかけると、離れたところにいてもよたよたとやってきて、腕枕に抱かれて、長いときは5時間ぐらい、ずっと添い寝をしてくれていました。向こうも患者なのに、まるで付き添いさんのように。

こっちも腰が痛いので、同じ方向ばかりに身体を向けていられず、腕枕をはずし、寝返りを打って背中を向けるんですが、しばらくして元のほうに向き直ると、まだいるんですね。

途中、ショコランはトイレに行くんですが、また戻ってきて、ぼくのふとんの中に入ってくるんです。

そんなショコランなのに、4/7の未明は、あっさりと出ていきました。これがお別れの挨拶だったのかな。



朝、11時すぎにまた倒れ、運び込んだ動物病院の診察台に乗せたときは、もう酸素のチューブをはずしたら、すぐにぐったりするような状態でした。

それでも先生が最後の望みを託す処置をしてくださったので、それの効果が出るかどうかを、数時間、病院近くのファミレスで待機していました。

不思議なもので、このところ家の中での移動でさえステッキに頼るほどの腰の状態だったぼくが、スタスタとまではいかないまでも、なんの支えもなく歩いているので、妻もびっくりしていました。

火事場の馬鹿力、というのは、あるものだと思いました。



夕方5時、酸素フードをかぶっているショコランを前に、3年間診てきてくださった先生から、最後の処置も効果なく、もって一両日と告げられ、安楽死以外に選択肢はないと思いました。

自宅で死なせてやりたいというのは、あくまで飼い主の人間的価値観に基づいた自己満足にすぎず、ここまできたら、もうショコランにこれ以上苦しませないことが最優先と思ったからです。

が、妻の気持ちを整理する時間が必要だったので、いったん家に戻り、それで覚悟を決めてから、ふたたび夜の8時に動物病院に戻り、酸素フードをはずして、ぼくたちふたりが撫でたり呼びかけたりしながら、8時8分から措置開始。

8時11分、文字どおり眠るように静かになりました。



人間の死に顔というものは、いくら「眠っているようですね」と言ったって、あくまで死者の顔ですが、ショコランの穏やかな顔は、文字どおり眠っているとしか思えません。

病院から連れ帰り、自宅に寝かせていても、どうみても眠っているとしか考えられないのです。じっと見つめていると、ぼくも妻も、ショコランが息をしている錯覚にとらわれました。



息を引き取ってから一日半が経ちました。

これから荼毘に付すために移動します。



こういうわけで、サイン本の送付がお約束の3月末に間に合わず、すみませんでした。

また、海外初旅行の珍道中体験記は、当分の間、中断いたします。

落ち着いたら、またHPの更新を再開します。

私もプロですので、作品には影響がないようにします。



なお、ショコランは私の作品のいろいろなところに名前や品種を変えて登場してきましたし、これからも出てきますので、可愛がってやってください。

直近では、今月下旬発売の角川ホラー文庫『勉教』(チームクワトロ・シリーズ第二弾)のレギュラー動物キャラ「ネコの田中」がそれです。