2012年3月9日金曜日

匿名はマルチユニバースをつくるのか(1)

ネットの炎上ネタを取り上げるのは、取り上げた本人が軽率にみえるという法則があるのだが、もともとぼくは軽率なところがあるし、それに人間の思考回路の「多宇宙(マルチユニバース)」的不思議さを感じてしまったうので、書いてみることにするのだ。



ネットをチェックしている人なら、よく知っていると思うけど、最近の炎上モノに「放送大学事件」がある。知らない人のために、かんたんに記すと、こんな展開だ。



矢吹樹(やぶき・いつき)と名乗る「某有名大学の教授」なる人物が自分のツイッターで《放送大学を卒業して教授になっている人がいるけど、これってありですか? 本当の大学を卒業していない(中略)大学というもの自体を理解していない》

と、書いた。すると、なんともユーモラスなオバケのアイコンを使った「__obake」というアカウント名を持つ人が

《本当の大学の定義ってなんですか?》

と反応した。

このとぼけたアイコンと「オバケ」という名前には、ぼくでもだまされるし、きっとみなさんもそうだろう。どうせ、ひまをもてあましてネットでいちゃもんネタを探しているひきこもり系の若者あたりがからんできたのだろう、と。



自称・有名大学教授の矢吹樹も、そう思ったに違いない。そして、おもいっきり相手を見下して、こうツイートした。

《貴方は放送大学出身ですか? そういう質問をすること自体が放送大学》

すると「obake」は言った。

 《私は学長です》



この返信を見た一瞬は、おそらく矢吹樹は「な~に言ってんだよ」と笑ったはずだ。「ふざけんな」と。

でも「obake」のツイートにはきちんとリンクが張ってあったから、それをクリックしてみたはずだ。そして全身の血の気が引いたに違いない。

ホンモノの放送大学学長だった。岡部洋一学長。

しかも東京大学工学部卒で同大学院修了、東京大学名誉教授。

この燦然と輝く経歴に、放送大学差別論者の矢吹樹は失神しそうになっただろう。

岡部氏によれば「obake」というのは苗字の「okabe」を入れ替えたもので、若いころからそう呼ばれていたのだという。




真っ青になった矢吹樹は反論も、ごめんもなしに、いきなりツイッターのアカウントを削除した。しかし、それでほうっておかないのが全国に何万、何十万?といるネット探偵団だ。

たちどころに矢吹樹の正体が暴かれた。

矢吹樹にとっては、obake=ホンモノの放送大学学長は衝撃の事実だったろうが、第三者にしてみれば、矢吹樹が関東地方にある国立大学のホンモノの教授だった(ほぼ確定)ことのほうが驚きだったのではないか。

そしてネット探偵団は、この有名教授が在籍する大学に、放送大学出身の女性教授がいることも明らかにする。職場の同僚をそういう目で見ていたわけだ。

さらに矢吹樹・著の「大学動物園」(文芸社)という本の存在もクローズアップされる。



ぼくは、よくいえば「フットワークがいい」のだが、さすがフジサンケイグループ出身だけあって、悪くいえば「みーはー」で「軽薄」なので、さっそくこの本をお取り寄せして読んだのであった。

さあ、本題はここからだ。

※仕事があるので、きょうはここまで。次回につづく。