2012年3月4日日曜日

マイベストワン@ヒューゴの不思議な発明-3D-(2011)


「あなたの好きな映画ベストテンは」ときかれて、順不同でなら10作挙げることはそれほど難しくない。でも、「あなたのベストワンは」ときかれたら、答えるのは不可能に近い。

たとえば1920年代の作品には1920年代のよさがあり、2000年代の作品には2000年代のよさがあり、それらを同列に比較はできないからだ。時代別のほかに洋・邦画の別もあるし、ジャンル別もある。

だが……。

まもなく60の大台に乗ろうとするぼくは、これまでの人生に見た映画の本数は「数千本」という単位になるが、はじめて「マイベストワン」と言い切れる映画に出会えた。

それが、いま公開中の「ヒューゴの不思議な発明」(マーティン・スコセッシ監督)である。

なぜ言い切れるのか? それは――





ジョルジュ・メリエスの「月世界旅行」(1902)から、本作品の3D技術に至るまで、映画の総決算が、決して映画史をなぞるわけでもないのに、すばらしい形でここに凝縮されているからだ。

本作は3Dを前提につくられた。その最先端の映像技術を使いながら、そしてカラーだし、もちろんセリフもあるのに、まるでサイレント映画を見ている気分にさせられる。

ここがすごい!

マーティン・スコセッシで、こんな独特の間合いを持った作品を見ることになろうとは。



83年ぶりの白黒サイレントでオスカーをとった「アーティスト」はまだ見ていないけれど、奇しくも、オスカーを争った「ヒューゴ~」も、サイレント映画の世界に引きずり込まれていく。

中盤まではセリフが非常に少なく、その間を1930年代のパリの香りあふれる音楽が満たしているからだろうか。



いや、それだけではない。

ジョルジュ・メリエス役のベン・キングズレーがいいのはもちろんだが、主役の男の子エイサ・バターフィールドがメッチャクチャいいのだ。

撮影時で13歳だったそうである。日本の子役で13歳でこれだけの演技ができる子がいるだろうか? いや、いない(即答)。

助演の女の子クロエ・グレース・モレッツも同い年。この子もいい。



予告編はTVでもずいぶんやっていたから見た方も多いと思うが、このタイトルと予告編だけでは、いったいどんな内容か見当もつかないだろう。

予告編には必ずジュード・ロウと機械人形が出てくるから「A.I.」みたいなイメージを浮かべるかもしれない。あるいは「ハリー・ポッター」的なものかと。

でも、今回は出だしの展開も書くのはやめておこう。なんの先入観も持たずに見たほうがいい。

淀川長治や水野晴郎じゃないけど、映画がほんとうに好きな人ほど、まいってしまうのではないか。



不覚にもラスト近くで涙がこぼれて仕方なかった。

なんでだろう。ふつうの涙とは違った種類の……。

この映画で泣くとは、予想もしませんでしたね。