2012年2月9日木曜日

いろんな外国語⑫デンマーク語と⑬スウェーデン語-北欧3兄弟を成す言語

「北欧三国」といったら、反射的にノルウェー、スウェーデン、フィンランドを挙げがちだが、言語的にみるとフィンランド語は完全な仲間はずれで、それに代わってデンマーク語が入る。




いまでこそデンマークは小国のイメージだが、デンマーク・ノルウェー・スウェーデンの3王国が結んだカルマル同盟により1400年代はヨーロッパ北部を支配する一大強国であり、1523年にスウェーデンが離脱したあとも、デンマーク=ノルウェー二重王国として、デンマークはノルウェーを支配下に置いていた。

ノルウェーがデンマークの支配から離脱したのは1814年だが、二重王国から離脱したといっても、ノルウェーに独立するだけの国力があったわけではなく、デンマークがノルウェーの支配権をスウェーデンに譲ったにすぎなかった。

ノルウェーがスウェーデンの支配から免れ、念願の独立をかなえたのは1905年である。わずか百年ほど前だ。



1814年にノルウェーがデンマークからスウェーデンに――言葉は悪いが――「売り渡された」ような形になった時点で、ノルウェーの人々は、公式な読み書きではデンマーク語を使っていた。ずーっとデンマークの属国状態だったのだから。

だからデンマークの束縛から逃れた時点で、ノルウェーでは、言語上でもデンマークの支配をどれだけ消せるかが重要なテーマになった。そのノルウェー語化の流れが穏健か急進的かによって、「ブークモール」と「ニーノシュク」というふたつの系統ができて、現代のノルウェーではこのふたついずれもが公用語となっている。



いま我々外国人がノルウェー語を学ぶときは、アンチ・デンマークの姿勢を強烈に打ち出してノルウェー西岸の方言をベースにつくられた「ニーノシュク」(ニューノルスクの表記も)ではなく、デンマーク語の影響をゆるやかな形でノルウェー語化したブークモール(ブックモールという表記も)がテキストに使われる。

ノルウェー国内でも8割以上、9割近くがブークモールの話者だからだ。



そんなわけで、デンマーク語とノルウェー語は見た目がものすごく似ている。ところが、綴りが同じ単語でも発音がかなり違うのだ。

一方、ノルウェー語とスウェーデン語は、表記はだいぶ違うのに、耳で聞いたときの独特の「ふにゃふにゃ感」は、かなり似通っている。



そこで白水社の「CDエクスプレス」という語学シリーズ(「ニューエクスプレス」の前のシリーズ)では、横山民司という著者が、まったく同じ内容のテキストを、デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語で表わしたらどうなるか、というコンセプトで、三カ国語の本をそれぞれCD付きで三種類出した。

これは非常にめずらしい試みであり、貴重な語学資料だ。アマゾンでみたら、このうち「CDエクスプレス ノルウェー語」は、かなり高い値がついた中古でしか入手できなくなっているようだが。



4年前のノルウェー取材旅行のときに、ぼくは3冊を揃えて、同時にはじめてみたのだが、この三カ国語はあまりに似すぎていて、逆に混乱して、まったくの北欧言語初心者には、この方法は無理だった。

なのでノルウェー語オンリーでしばらく進めてきたが、なんとかノルウェー語の「よちよちコース」は卒業できたと思うので、デンマーク語もスウェーデン語も再開している。



ところで、北欧言語に共通した習慣でこれはいいなと思ったのが、「○○世紀」という表現を使わずに「○○百年代」という言い方にするところだ。

具体的にいえばノルウェーがデンマークの支配から逃れた1814年のことを、ふつうは「19世紀」と表現するが、北欧流では「1800年代」という。

これはすごく合理的でいい。ぼくにとっては自分が生まれ育った「20世紀」が1900年代だというのはすぐわかるが、「19世紀」ぐらいならまだしも、「18世紀」といわれても、それが1700年代だとは、すぐにパッとひらめかないのだ。

たとえば「18世紀のあいだじゅう、ノルウェーはデンマークの支配下に置かれていたが、1814年になってこの連合は解消された」という文章で、18世紀と1814年との前後関係がどうしても混乱してしまう。

まして「紀元前2世紀」と言われたら、それは紀元前100年代のことなのか、紀元前200年代のことなのか、それとも紀元前300年代のことなのか、よ~く考えないとわからなくなるのであった。

その点、「1900年代」とか「2000年代」という北欧流の表記は、歴史の時系列を把握するのに、とてもわかりやすい。



ただ、同じことを指しているのでも「20世紀」と「1900年代」では、後者のほうがずいぶん古く感じるのは不思議だ。