2012年2月24日金曜日

苦肉の策の「言語すり替え」@「レッド・オクトーバーを追え」(1990)

先日、潜水艦映画のことを取り上げたけど、映画セリフ的に非常にユニークな手法を使った潜水艦ものについて、ふれておかねばならない。

ねばならない、ってほどのこともでないんですが(笑)。

それは「レッド・オクトーバーを追え」。

前代未聞の「使用言語すり替え」と言ったらいいのか、ちょっとほかに同様のケースを見たことがない手法が使われた。




まず、ストーリーの基本はこうだ。

無音推進装置を装備したソ連(時代設定が1984年なのでロシアではない)の最新鋭原子力潜水艦「レッド・オクトーバー」号の艦長マルコ・ラミウス(ショーン・コネリー)が、原潜ごとアメリカへの亡命を画策する。そして、自分のほかに8名だけ極秘の同調者が乗組員の中にいる。

その計画を艦長自身の告白の手紙で知ったソ連当局は、レッド・オクトーバーの撃沈をめざして多数の原潜や戦艦を出動させる。

と同時に、駐米大使を通じてアメリカ側に、ラミウス艦長が精神錯乱で核ミサイルを米本土に打ち込もうとしているとのニセ情報を流し、米軍にもレッド・オクトーバーを攻撃させようとする。

しかし元海兵隊員でCIAのジャック・ライアン(若くてスマートだったころのアレック・ボールドウィン)が艦長の亡命計画を察知。艦長をレッド・オクトーバーごと無傷で確保しようと乗り出す―――



作品の冒頭では、ショーン・コネリー演じる艦長はちゃんとロシア語をしゃべっている。ところが艦長室で政治士官とふたりきりになったところで、この士官が日記だか本だかの中身をロシア語で読んでいる途中で、セリフがいきなり英語に変わるのである!

セリフの途中で、だ。

すると、それに応じて艦長のショーン・コネリーも英語になってしまう。それだけではない、たったいままでロシア語が飛び交っていたソ連原潜艦内だったのに、乗組員全員が英語になってしまうから笑っちゃう。

つまり、観客側に同時通訳機能が自動的に備わったような設定となる。



じつはラスト近くに、ラミウス艦長とライアンたちアメリカ側とが対面する場面があり、いきなり英語で通じてしまうのはおかしいから、演出上、亡命側はロシア語をしゃべっていなければならない。

そのため、ずーっと英語だった艦長たちが、また急にロシア語になってしまうのだ。でも、それだとほんとうはロシア語ぺらぺらではないショーン・コネリーがもたないから、またソ連原潜艦長は英語に戻って、ライアンたちと込み入った話をするのである。



この奇妙キテレツなロシア語と英語の切り替えは、せっかくスケールの大きな作品全体の質にも関わってくる気がするのだが…。