2012年2月20日月曜日

潜水艦映画の最高峰@「Uボート」(1981)

潜水艦という狭い空間を舞台にした作品の映画化は、しっかりした出来映えになっているものが多い。

おそらくそれは、限定された閉鎖空間だけでストーリーが展開する性質から、必然的に脚本が上質なものでないと、もたなくなるからだろう。

「M:I 4」のように、ロシアでクレムリンの爆破があって、つぎにドバイで世界一の超高層ビルの壁面を直角に駆け下りて、そのあとインドに飛んで…というような、めまぐるしい展開で盛り上げるワザは使えない。

そうした制約下のもとで作られる潜水艦映画の最高峰は、1981年に西ドイツで製作された「Uボート」で、監督もキャストもドイツ人で、もちろん言語もドイツ語。

公開から30年以上が経つけれど、ハリウッドでこれをしのぐ潜水艦映画は登場していない。




当初の上映時間は149分で、これもそれなりの長さだったが、いまDVDで見られるディレクターズカット版は、なんと209分だ。

3時間半のほとんどが潜水艦の中というのも「えらいこっちゃ」なのだが、全編まったく飽きずにぐいぐい引き込まれるというのはすごいことだ。

厳密にいえば、冒頭の出航前のどんちゃん騒ぎはやや冗長に思えたが、潜水艦に舞台が移ってからは、だれるところが一切ない。

このしっかりした脚本はウォルフガング・ペーターゼン監督自らが執筆。



荒っぽい言い方が許されるなら、ウォルフガング・ペーターゼンはジョン・ウーのドイツ版で、ハリウッド進出前のジョン・ウー(呉宇森)が香港時代に撮った名作に「男たちの挽歌」があるように、ペーターゼンのドイツ時代の勲章が、この「Uボート」である。

もちろん、年代的なことから言えば、ジョン・ウーのほうが、ペーターゼンの香港版というべきだが。

ハリウッドに移ってからのペーターゼンは「アウトブレイク」「エアフォース・ワン」「パーフェクト・ストーム」「トロイ」「ポセイドン」といった話題作を手がけていったけれど、さすがにアメリカでは、スタジオが要求するハリウッド・マニュアルには逆らえないとみえて、「Uボート」のような、沈黙の重みといった演出はあまり見られない。



さて、この作品が高い評価を得た理由は、潜水艦内部での、文字どおり息が詰まるような緊迫感のリアリズムだが、もうひとつはやはりエンディングだろう。

終盤に入り、連合軍の艦隊がうようよいるジブラルタル海峡を、決死の覚悟でUボートが突破を試みる。そこで、ある種、お約束の展開になるのだが、観客は「結末A」か「結末B」のどちらかしかないだろうと思う。

そして、おそらく「結末A」のほうだろうな、と想像する。

最初に見たときのぼくもそうだった。

しかし、まさかの「結末C」が訪れるのである。



映画を見ていて想定外の結末に遭遇すると、だいたいぼくは椅子から転がり落ちたり、ひっくり返るという吉本新喜劇風のリアクションをする。

すでにこのブログで紹介済みの「エスター」のオチには、ひっくり返って頭を打って救急車で運ばれた(に等しい衝撃を受けた)が、潜水艦もので、まさか「やられた~」と叫ぶとは思わなかったのであった。



まだごらんになっていない方は、どうせ見るならディレクターズカット版のほうをおすすめする。二日か三日に分けて見ることになるかもしれないが、それはそれで、自分も長時間海の底で過ごしている気分になれるし。