2011年12月21日水曜日

▲「担当編集者から」VOL.48『ミステリオ』@角川ホラー文庫

今回は私・編集担当(岡田博幸=O)と吉村先生(Y)とのミニ対談形式でお届けします@京都・某店にて

O「『ミステリオ』ありがとうございました。うちの編集長の野﨑も『いやー、ほんとに、ほんとに、ほんとに面白かった!』と絶賛しておりました」

Y「そうですか。それはうれしいな~。なにしろぼくにとって、担当編集者が第一の読者だから」

O「だから、担当者でも絶対に結末を教えていただけないんですよね。途中の流れも」

Y「そう。企画打ち合わせの段階ですべての展開を教えちゃうと、最初にネタばらしをしてからマジックを見てもらうようなものになるからね。それだと、ほんとうの作品のインパクトがわからないわけですよ」




O「編集長も申しておりましたが、今回はチームクワトロの四人のキャラがものすごく立っていて、それが、今回の作品を恐いだけのホラーではないものにしたような気がします」

Y「編集長は、とくに金子白雲斎がお気に入りのようだったよね。道頓堀の戎橋で手相を観ているという設定の」

O「そうです、そうです。白雲斎に代表されるように、四人の超能力捜査官が決して完全無欠のスーパースターではなくて、欠点も持ち合わせている。それをほかのメンバーがカバーしている絆が、またいいんですよ」

Y「絆―ことしの漢字だから(笑)。最近のぼくは新生・氷室想介もそうだけど、スーパースターであればあるほど、欠点もしっかり描くようにしているんです」



O「それから最初に原稿をいただいたときに驚いたのがオープニングです。まさかアマゾン川をさかのぼるシーンからはじまるとは!」

Y「あそこは、絶対驚くだろうと、書いてるときから思ってました」

O「『ミステリオ』というタイトルも、ブラジルで話されているポルトガル語なんですよね。『神秘』とか『不思議』とか『秘儀』という意味の」

Y「そう。だからアマゾン川から物語がはじまるのは必然の展開なんです」

O「冒頭は、自分自身がジャングルの川を進んでいる感覚になりました。そういえば、今回は『川』の場面が印象的でした。日本の川の場面も、まるで映画を観ているように映像的で」

Y「あそこは、描き方も工夫してみました。映画でいえば撮影・編集方法を工夫した、というところかな」



O「そしてホラーの真髄である恐怖という点でも、その恐怖の正体がわかるまでのプロセスがドキドキものでしたね。いったい『彼ら』はアマゾン川でなにを見たのか、と。そして、その正体がわかってまたビックリで」

Y「でも、その正体は奇抜でありながら、決して突飛なものではなかったでしょ」

O「そうです。ものすごく現実的な説得力がありました。だから読んでいて恐かったです」

Y「チームクワトロの捜査官たちが特殊能力を持っているからといって、彼らの戦う相手が『なんでもアリのオカルト現象』にはしたくなかったんです。この恐怖が現実世界でも起こるかもしれないという、その怖さがいちばん重要だと思ったんですね」



O「それからなんといっても本作は首相官邸内で事件が起きるというところが『おー!』と思いました。そしてチームクワトロのメンバーと並んで主役になっているのが一之瀬圭という若き総理大臣」

Y「ちょっと裏話をすると、この作品の構想を具体化したのはことしの5月~6月ごろなんだけど、それが日本にといってどういう時期だったかは、言うまでもないよね」

O「はい」

Y「史上最悪の大災害のときに、史上最悪の総理がトップにいたということで、ほんとに暗い沈滞ムードが列島を覆い尽くしていた。そのときに思ったんです。せめて小説の中では、どんなパニック状態のときにも、先頭に立って国民を引っぱっていく、若くて明るくて人柄のいい(笑)日本国リーダーを描いていきたい、と」

O「そういうきっかけだったんですね」

Y「ぼくも原発事故についてブログでいろんなことを書いてきたけど、ちょうど発生から三カ月経ったところで、事前に通知したうえで、事故関連のブログ記事を全削除しました。たぶん、あれが一之瀬圭という総理が誕生したときだと思う。その段階では名前も決めていなかったけれどね」

O「だから、小説でよく描かれがちな総理大臣のパターンとはまったく対照的なキャラクターになりましたよね」

Y「日本国民の多くが、こういうリーダーを望んでいるんじゃないか、というのが一之瀬圭です。そういう意味では、『ミステリオ』とは勇気の出る小説という側面も持っています」

O「それは強く感じました。では、次作もチームクワトロと同様、一之瀬総理が主役になっていくんですね」

Y「そういえば、帯に『シリーズ第一弾!』って書いてあったけど、これはシリーズ化するの?」

O「先生から、そんな質問を……(笑)。編集長も切望しております。これだけ面白いチームクワトロと一之瀬総理の作品はシリーズ化するしかないでしょう、と」

Y「そう言われるかもしれないな~と思って(爆)、次作のストーリーは準備済み。ちょっとだけサワリを話すと……」

(すると、ここでカウンターの向こうにいたお店の女性が、それを小耳にはさみ)

♀「先生、私、そのストーリー、絶対読みたい!」

吉村&岡田(あわてて)「絶対人に言わないでよ。絶対秘密だからね」