2011年12月24日土曜日

いろんな外国語①ソルブ語-「はい」を「ハイ」という欧州の少数言語

旧版の魔界百物語②「京都魔界伝説の女」で詳しく書いたが、香港で話されている広東語におけるYESという肯定の返事は、「係」という字を書いて「ハイ」という。

これは日本語の「はい」と偶然の一致ではない。

諸説ある中で有力なのが、明治維新後に多くの若者がヨーロッパへ留学へ行くとき(もちろん船で)、途中立ち寄った香港で、人々が「ハイ、ハイ」と言っているのを聞き、これは「さようでござる」などより、はるかに短くて便利だとして、日本に持ち込んだというものだ。




つまり、ぼくたちが使っている最も基本的な単語「はい」は純日本製ではなく、輸入品で、しかも香港製だというわけだ。

たしかに、間投詞のような形での「はっ!」は江戸時代にもあったことが戯曲で確認できるが、肯定の返事としての「はい」は、古来より日常的に用いられていたという証拠はない。



さて、つい最近、マイナー言語まで勉強の手を伸ばしている過程でひとつの発見があった。

ドイツの東部ザクセン州で話されている話者2~3万人程度の少数民族言語にソルブ語というのがある。ソルブ人の多くがドイツ語化されていって、いまでは日常でソルブ語を話す人は減少傾向にあるという。

そのソルブ語のYESが"Haj"と書いて「ハイ」と発音するのだ。



ではNOはなんと言うかと調べてみると、これが「イイエ」なのだ!

というのは、真っ赤な嘘で……いや、真っ赤というほどではない嘘だから書くわけだが、ソルブ語のNOは "Ne" (eの上に補助記号がつくが文字化けするといけないので省略)と書いて「ニェー」と発音する。

これが聞きようによっては「いいええ」と、後ろにアクセント置いて強調したときの日本語の「いいえ」にも受け取れるのだ。



ザクセン州はポーランドやチェコに近いため、ソルブ語の「こんにちは」は「ドブルイ ジェイン」で、チェコ語の「ドブリー デン」とよく似ているし、ポーランドではそのまま語順を逆にして「ジェイン ドブルイ」だ。

でも、チェコ語もポーランド語もYESは「ハイ」ではない。



広東語と違って、ソルブ語の「ハイ」と日本語の「はい」の一致は、まさに偶然だと思うが、いまだに日本語の起源において定説を形作るだけの物的証拠が現れないから、日本語のルーツをとんでもないところに求める珍説が跡を絶たない。