2011年11月15日火曜日

これは近未来小説か、たんなる妄想か?

平壌の空港に着陸した飛行機の窓から、巨大な、あまりにも巨大な金日成の肖像画が掲げられた空港ターミナルの建物を見たとき、ぼくはこれから厳しい入国審査があることを覚悟していた。

日本を出国するとき、ぼくは一冊の週刊誌を持っていた。「週刊朝日」。

媒体が媒体だけに、これなら問題はないだろうと、ひまつぶしのために空港の売店で買ったのだが、きっと取り上げられるに違いないと思い、ざっと中に目を通して、搭乗直前に捨てた。

そして平壌の空港に入ったぼくに、衝撃の、想定外の展開が待っていた。

荷物はノーチェック。X線検査さえ通さず(少なくとも見ている前では)、ベルトコンベアから出てきた荷物を自分で受け取り、ぼくたち日本からの旅行者はバスへと案内された。

バスに乗り込んでからも信じられない言葉が待っていた。

「どこをどう撮っても、まったくかまいません。撮影は自由です」






これはぼくが書こうとしている近未来小説の一節ではない。こうなったらいいな、という空想でもない。

事実である。

いまから約15年前、北朝鮮の主要ポイントを一週間かけて回る旅に出たぼくを待ち受けていた実際の、北朝鮮側の対応である。



今回、選手やサポーターたちが受けた厳しい入国審査と持ち込み制限からすれば、夢のような出来事にみえるだろう。

でも、バスに乗り込んで撮影自由を申し渡される前、日本語の達者なガイドが発した最初のひと言がこうだった。



「日本からいちばん近くて、いちばん怖い国へようこそ」



戸惑いの笑いが、車内に静かに広がった。