2011年11月10日木曜日

登山ブームの陰にレスキュー訓練


登山ブームが盛り上がれば、それだけ遭難事故も増え、レスキューの出動回数も増える。

上級登山者の遭難と違って、ブームに乗った初級者の事故は、技術的なことよりも心構えの安易さから起こることが多い。

それでもレスキュー隊は、人の命を救うために出動する。そして、そのための地道な訓練を山ガールたちの知らないところで、こつこつと積み重ねている。

引きつづき旧ホームページより。





「命を救う(2)」

救助ヘリで機上からホイストのワイヤーをさばく係をホイストマンと呼ぶが、ホイストマンが右利きであるか左利きであるかで、救助隊員がヘリから降りるときの段取りも少し変わる。そして、ホイストマンのワイヤーさばきが隊員の安全確保を左右することになる。

写真は遭難者を救助して引き揚げるときの模様だが、隊員が単独でヘリから降りていくときには、うかつに下りると振り子のように円錐形に回転をはじめてしまうので非常に危険である。

見ているぶんには何気ない動作に見えるが、真っ直ぐ下降しているのも神経をつかうところだ。



これはあくまで訓練の光景であり、季節は十月、天気も良好だし、標高も1500mの戸隠高原である。しかし、これが2500mから3000m級の峻険な峰々が並ぶ北アルプスになると空気も薄く、ヘリのダウンフォース(下向きの力)も下がるから、いっぺんに運べる人数も減る。

しかも冬場の気温は、マイナス二十度を軽く下回る。風も強いし、雪も降る。そんな状況下では、救助隊員がまっすぐ下降していくだけでも大変だ。

一刻を争う場合には、いちいちヘリに収容せず、隊員が遭難者をしっかり確保した状態で、吊り下げられたまま救急車の待機場所まで飛んで戻ることも、かつては行なわれていた。




ところが安易な登山者の中には、救助ヘリをタクシー代わりに考えていて、登山中に疲れたからという理由だけで呼ぶ人間もいれば、民間ヘリが飛んでくると多額の費用がかかるから、だったら要らないと断ってみたり、信じがたいような勝手な輩がずいぶんいるそうである。

それでも人の命を救うために彼らは飛んでいく。自らもリスクを背負いながら。


【追記】
ホイスト降下訓練中の、戸隠遭対協 現・救助隊リーダー秦さん。

訓練を受けていない素人がこれをやると、いきなり回転がはじまったり、振り子のように振られたりと、とんでもなく怖い目に遭うことになる。

じつは安定した姿勢でまっすぐ降りていくことは、はためで見ているほどかんたんではない。