2011年8月4日木曜日

「魔界百物語」バーチャル記者会見

きょうはお暑い中、「魔界百物語」バーチャル記者会見にようこそおいでくださいました。

これは、先日のプロジェクト発表に伴い、読者のみなさま、あるいは他社編集者のみなさまが抱かれたであろう数々のご質問にお答えするものです。

では、前置き抜きにして早速質疑応答をはじめましょう。




――「魔界百物語」を刊行する飯塚書店とは、どういう出版社なのですか?


「私も今回はじめておつきあいをさせていただきますが、飯塚書店さんは1949年創業の出版社で、ホームページ(http://www.izbooks.co.jp/)をごらんになればおわかりのように、文芸書、とくに現代詩・短歌・俳句など短詩型文学をメインに出版されています。短歌・俳句のジャンルでは角川書店に次ぐ実績を誇っています」

――それと氷室想介のシリーズとは、なんだか結びつかないのですが。

社長の飯塚行男氏は、早稲田大学時代にはラグビー部に所属していたスポーツマンで、叔父様から会社を引き継ぎ二代目として奮闘中でいらっしゃいます。今回の吉村達也によるミステリー連作『魔界百物語』を機に、エンタテインメント分野の作品も積極的に出版していかれる予定とのことです」





――あのですね、隔月で5冊出されるというところが非常に気になるんですね。そんなペースで出されて、他社の仕事はできるんでしょうか。

「業界の方ですか?」

――そんなところです。

「ご説明します。SEASONⅠの5冊については、すでに4まではほぼ仕上がっております。執筆未着手は、最後の『QAZ』だけです。

この企画はかなり早い段階から新規書き直し作業をはじめていました。現時点では1と2が完成。3と4は仮脱稿後、世情に応じた加筆が必要となる場合に備えて、清書をまだ控えているといった状態です」

――世情に応じた加筆とは?

「じつは再スタートを切った『魔界百物語』は完全に時代とシンクロして動いています。ダウンロードカタログでご説明のとおり、氷室想介は1964年1月1日生まれと設定。したがって、第1巻は彼が47歳のときからはじまります。

そして1の『妖精鬼殺人事件』は事件が2011年の夏に、2の『京都魔王殿の謎』は事件が2011年の秋に起きるという設定で、いったん書き上げました。

ところが、そこに3・11の大震災がやってきたのです。ほぼリアルタイム進行のストーリーである以上は、この大きな出来事を避けて通るわけにはいきません。とりわけ2については、お読みになればわかりますが、作品内容にも重大な影響が出ることになりました。

そこで1と2は、再度手を入れ直したといういきさつがあります。本来なら、企画発表も発売も、もっと早くを予定していたのですが、そんな事情で少し遅れました。

3と4も、日本国内のみならず世界的に大きな出来事(べつに災害とは限りません)があったときにある程度対応できるよう、あまり早くから印刷に回さず、仮の完成状態で保管中というわけです」





――では、これまでどおり、ほかのシリーズなども書かれるわけですね。

「当然です。この企画が入ったことで、執筆作品数は増えることはあれ、ほかの作品にあてる時間を削って『魔界百物語』にあてるということはありません。温泉シリーズ、世界遺産シリーズ、ホラー、歴史ミステリーや、そのほかの単発作品も従来どおりです」

――そのわりには、5月からしばらく新作がでていないのは、どうしても「魔界百物語」の影響のような気がしてなりません。

「5・6・7・8と新作がでなかったのは、それぞれの作品をより面白いものに仕上げるために費やした格闘期間とみていただければさいわいです」





――完全に新規書き下ろしということですけれど、前の作品とどれぐらい違うんですか。

「あまりネタバレにしたくありませんが、1の『妖精鬼殺人事件』は旧シリーズの『京都魔界伝説の女』の中で、部分的なエピソードとして使われた少年の転落事件を、独立したミステリーに仕上げています。設定は前と同じですが、内容は完全に一新しました。

2の『京都魔王殿の謎』は『京都魔界伝説の女』の主役である鹿堂妃楚香がプロデュースする魔界ツアーで事件が起きるという設定は同じですが、今回の出版プロデューサーである梶原さんや編集スタッフが、読んでおもわず声をあげたという大逆転が加わるなど、これも内容的に大幅に変わっています。

3の『幻影城の奇術師』は旧作の『平安楽土の殺人』の登場人物が、4の『殺人者の舞踏会』は旧作の『万華鏡殺人事件』が登場人物が出ることと、信長の安土城や万華鏡が登場するという共通要素はあるものの、ほぼ100%違った作品になっています」





――それでも旧作の3冊を読んだ人が、今回の5作目の『QAZ』だけ読んでだいじょうぶなんですか。

「殺人プロデューサーQAZの正体は誰なのか、という一点に絞り込んでいえば、その設定は変えていませんし、候補者となるキャラクターたちにも変更はありません。ですからQAZが誰なんだ、という点に絞って追いかけたいとおっしゃる方には、それで支障はないと思います。

でも、今回のシリーズではQAZはいったい誰なんだろうというミスリードや、正体に関するヒントが、よりたくさんちりばめられており、QAZの正体を推理する楽しみが一段と増えた内容になっていると思います。ですから、生まれ変わった『魔界百物語』を一から読んでいただければ、とてもうれしいです」

――でも、ぼくなんか、だいたいQAZの正体は想像ついちゃってるんですよね。

「あ、そうですか?」

――しかも、なぜQAZっていう名前になったのか、っていうのも、みえてるんですけど。

「ほう」

――ミエミエのバレバレじゃないですか。

「あらま、そうですか」

――そんなわかりきった答えを知るために、またもう一回新たに読む必要はないんと思うんですが。

「失礼ながら、あなたの推理は100%はずれていると思います。だから、新たに読み直して損はありません。というのも、今回はさらに読めば読むほど、ますます読者は自分の考えが正しいと確信するように作りましたから、なおのこと、真相の意外性は強調されると思います。

しかも読者の推理が部分的に当たっていながら、じつは大はずれという非常に凝った落とし穴が仕掛けてありますので、ぜひ新たなる第一巻からお楽しみいただければと思います」

――すんごい挑戦的ですね。

「読者への挑戦、です」





――じゃあ、ちょっと角度を変えて、ものすごくききにくいこと、ふたつ質問していいですか。

「どうぞ」

――SEASONⅠの5作目『QAZ』でQAZの正体がわかるわけですよね。じゃ、6作目からは、どんなネタで引っ張るんですか。

「それはSEASONⅡの第一作で提示します。そして100冊目で、壮大なテーマが明らかになるようになっています」

――とかなんとか言っちゃって、ほんとはなんにも考えていないんでしょ、結末を。

「そういう疑惑は、当然でますわな~(笑)」

――笑ってごまかさないでください。

「私のブログの6月12日付で『LOSTのLASTはLOST?』と題した記事を書きました。その記事は、テレビドラマネタでありながら、カテゴリーを「映画」や「エンタメ」にせず、「氷室」としたのは、私の『魔界百物語』では『LOST』で噂されていたようなラストの未定などはなく、100冊目までの設計図がちゃんとできていることを言いたかったからです」

――それ、自分で言ってるだけでしょ。証明できないじゃないですか。

「疑われてるなあ……(泣)。でもね、これだけの大きなプロジェクトですから、結末を考えずにスタートはできないんですよ。ですからプロデューサーの梶原さんと、今回のビジュアルを担当してくれているジャン=フィリップ・Kのふたりには、100冊目のどんでん返しを話してあります。ふたりともぶっ飛んでました」





――じゃあ、そこは信用するとして、もうイッコのききにくい質問ですけど、せんせーは、いまおいくつですか。なんで年をきくか、わかりますよね。

「100冊を完成するころには何歳になっているか、ということですね」

――はい。

「いま、ぼくは29歳です。来年、30ですね」

――え……?

「そして来年の誕生日で30歳を迎えたところで、年齢はふたたび0歳にリセットされるんです」

――なんですか、それ。

「ぼくは還暦なんてくだらない考え方は、まったくしていません。それはなにも若ぶるためではなく、60年経ってようやく人生一回りという発想がふるいんですよ。

人生は30年で一回りです。そう思いませんか。最初の30年は人生の助走期間です。そして二回り目の30年で、ようやく人生って、どんなものかがわかってくるんです。そのワンサイクルごとに、人生を見つめ直し、飛行機でいうなら飛び方を変えていく。そして最後の……さすがに三周目が最後でしょうけど、これがほんとの人生の完成期でね。そこで100冊目が仕上がるのは、非常によいことではないでしょうか」

――でも、常識で考えたら完成前に死にますよね。

「なかなかストレートなツッコミで」

――はぐらかさないで、ちゃんと答えてもらえませんか。完成しないシリーズをスタートさせてるんじゃないんですか。

「親に結婚を反対された若者の心境、というふうにお答えしておきましょうか」

――どういう意味ですか。

「周囲が否定的な見方をすればするほど、本人は燃え上がってゴールへ邁進するってことです。なので、否定的な見方は大歓迎です。どんどんおっしゃってください」





――では、もうちょっと具体的な、というか、現実的な質問をさせてもらいますけど、ソフトカバーの単行本で、値段が1500円ということですけど、ずっと1500円なんですか。

「これはむしろ出版社の方にお答えいただいたほうがよいかもしれませんが、400ページを超えたら1500円、それ以下は1400円という基準を予定されているようです。ただし、これは状況において変化するかもしれませんので、その都度、定価は発表させていただきます」

――文庫化はしないんですか。

「これはいわば氷室想介の完全保存版ライブラリーですので、基本的には完結まで文庫化はない、という前提ではじまっています」

――電子書籍化の予定はありますか。

「いまのところ予定はありません」




というところで、そろそろ時間もまいりましたので、バーチャル記者会見はおひらきにさせていただきたいと思います。また必要に応じて、こうした会見の場を持ちたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

本日はありがとうございました。