2011年5月29日日曜日

正解と解説 第7問

さあ、いよいよ「吉村達也検定」最難関の険しい峠に差しかかってきた。

ここから3問が今回の山場。

【問題】

⑦吉村達也長編作品のほとんどは三人称で書かれているが、中には主人公の一人称で話が進んでいくものがある。それはどれ? 正解はひとつかもしれないし、複数かもしれない。

(マ) かげろう日記
(ミ) 私の遠藤くん
(ム) 天井桟敷の貴婦人
(メ) 蛍坂
(モ) ソックリさん


【解説】

ぜんぶ読んだ人にとっては、いたってカンタン。しかし、どれかひとつでも読んでいないと、疑心暗鬼になってしまう選択肢。

出題時点で最新作だった『ソックリさん』以外のタイトルは、どれも一人称の小説だと疑えば、そう思えてしまう。ホラーとはいえ、『かげろう日記』などは、その最たるものだろう。



しかし、『かげろう日記』の一部分を覗いてみると、こんな感じだ。


 町田輝樹は、釈然としない表情で日記を見つめていた。
 ノートが途中で破られた形跡はなかった。それなのに、二月十五日から六月五日までの記述がすっぽり抜けて、バレンタインデーのつぎは、いきなり六月六日からはじまっているのである。



三人称だ。

そして『私の遠藤くん』も、200冊記念の『蛍坂』も三人称の文体である。



では『天井桟敷の貴婦人』はどうか。たとえばこうである。


 事件当夜ぼくに向かって、これは完全な密室かもしれない、などと警察官らしからぬ推理小説的なつぶやきを洩らした横田氏だったが、けっきょくそれは、ひさしぶりに再会したぼくへのリップサービスのようなものかもしれなかった。


一人称だ。

『天井桟敷の貴婦人』では最初から最後まで「ぼく」が語り通している。「ぼく」とは、ごぞんじ朝比奈耕作。非常にめずらしい朝比奈耕作の一人称作品だ。



もうひとつ、『ソックリさん』は出題直前に発売されたホラーであり、未読の方は「これは新刊の宣伝のために選択肢に入れただけで、一人称小説のはずがない」と決めつけられたと思う。

しかし、最初の一行にも、最後の一行にも「ぼく」が入っている。もちろん途中もだ。『かげろう日記』ではなく『ソックリさん』こそ、一人称で書いたホラーなのだ。



【正解】  (ム) 天井桟敷の貴婦人・(モ) ソックリさん(双方解答者のみ正解)
正解率24% 難易度 同率1位

★★★★★★
【ここまでの正解リスト】
①イまたはア ②コ ③ソ ④テ ⑤ネ・ナ(逆順不可)
⑥ヘ ⑦ム・モ(双方解答者のみ正解)




⑥まで順調にきた人々が、この問題でどんどん転んだ。その一方で、それまでミスをしてきたけれど、これは正解したという人もいる。その両者の差が、まず1ゲーム縮まった。

⑦~⑨の正解率に基づく難易度は、全問中1位・1位・4位。この「峠の三題」をすべて無転倒の3連勝で走り抜ける「山の神」は現れるか?