2011年3月9日水曜日

▲「担当編集者から」VOL.42 『Dの変身』@PHP文芸文庫

▽吉村先生の異色の「家庭危機小説」(ファミリー・クライシス・サスペンス)である『ドリーム』(2007年8月、当社刊)が、加筆のうえ『Dの変身』と改題されて、3月17日、PHP文芸文庫の1冊として全国書店にて発売されます。

▽「D」とは、27歳の会社員・増岡大輔の名前の頭文字。学生時代に妊娠させてしまった瑛子へのいわば「責任をとる」かたちで「できちゃった婚」してから5年。ひとり息子の亜輝がすべてという教育ママになった瑛子が家計を管理、自由も家庭での居場所もなくなった大輔は、その不満と怒りを「Dの変身」という自身のブログに書き始めます。



▽しかし、これが事件の始まり。女子大生キャバ嬢・杉本玲花との不倫に陥った大輔は、「お受験合宿」に23万円必要という妻のメモにキレて、「それなら玲花にやったほうがまし」と女子大生にネットから23万円を送金……したはずが、なんとヒトケタ間違えて230万円を振り込んだ! 

▽そのミスをきっかけに、まさにノンストップのジェットコースターか、打ち寄せる津波か、あらゆる「不幸」と「恐怖」が次々と大輔に。



▽「パニック・サスペンス」として、一気読み必至の面白さに加え、先生も「あとがき」で「ほんとうのテーマは『愛と性』」と述べられているとおり、男女の「愛」とは何か、そこに介在する「性」と、副産物的に子どもができる「現実」との間で、20代の男女に何か起きるのかについて、覚めた眼で描き、問題提起されています。

▽27歳の大輔はじつに身勝手であり、我慢が足りず、判断が浅はかで、「何をやってるんだ」とあきれたくなります。しかし、あきれる一方、「わかる、わかるよ、大輔くん!」と言ってやりたい自分がいます。

▽ちなみに本書の「あとがき」、「一瞬のミスタッチ」とサブタイトルが付いています。じつは「誤送金」のエピソードには、吉村先生が実際に経験された実話がもとになっているのです。もちろん「ミスタッチ」には、もっと深い意味が込められているのですが……。文庫版ならではの「あとがき」の方も、ぜひご愛読ください。

(PHP研究所文藝書編集部 根本騎兄)



【作者からひとこと】
▽『ドリーム』のコンセプトをより明確に表わすために『Dの変身』と改題しました。作者が三年ぶりに読み返しても、いったいどんな結末になるのかわからなかったという(笑)、 終着点不明のノンストップ家庭崩壊パニック小説。