2011年3月9日水曜日

ふたたび南座へ

朝10時前。半日前、打ち上げでこの界隈にきたが、けさは南座の楽屋へ直行。澤瀉屋(おもだかや)最古参の市川寿猿さんに、教えを乞いたいことがあっておたずねする。楽屋口からエレベーターに乗ると、ちょうと笑三郎さんと春猿さんが乗っておられた。

3階の寿猿さんの楽屋へ。開演前にもかかわらず、いろいろと教えていただくことができた。開演30分前に楽屋を辞して、そのまま南座客席へダイレクトに入る。

本日の演目は「獨道中五十三驛」(ひとりたびごじゅうさんつぎ)市川右近十五役早替りならびに宙乗り相勤め申し候。


もともとは猿之助の十八番。これを右近が務める。3日の初日には、終演後のカーテンコールで市川猿之助が登場。15年ぶりに南座に姿を見せて挨拶をしたらしい。

この演目では、第一幕の化け猫演出のケレンと宙乗り、そして大詰の、十五役のうちの十二役を一気に右近が早替わりするところが見どころ。化け猫に操られる「おくら」を演じる市川猿琉も見事だったし、右近による「お半・長吉」の早替わりは、まさにマジックといってよい早業の人間交換。

コモで全身を包んだお半(まちがいなく、顔は右近)と、傘を差して現れた長吉(別の役者)が、舞台上、どこにも隠れることなく、一瞬、傘で身を隠しただけで、着物とカツラごと、たがいが入れ替わって、お半の右近が長吉に、長吉の役者がお半の姿になっているのだ。場内、ため息。あっというまの男女交換の見事さに、拍手が出るのも遅れる。

ほかの早替わりでは、右近が物陰に隠れた瞬間、ダミーの役者が代わりに出てきて後ろ姿で演じる。その間に、物陰で右近が着替える。つまり二人芝居なのに、実際は三人、場合によっては四人いるわけで、これはスーパー歌舞伎でもよくやるすり替え。客もある程度見抜ける。

しかし、お半・長吉の瞬間全身チェンジは、ほかにダミーの役者が介在していないのが明らかなうえに、客の視線をさえぎる大道具もない舞台中央での男女の交換なだけに、Mr.マリックのショーよりずっと驚く(笑)。

そのトリックは……ここでは書けない。
ちなみに、この人間交換イリュージョンは、はるか昔から舞台で演じられているという。歌舞伎はマジックより進んでいるところがあるのだ。 

芝居がハネたあと、また寿猿さんと合流して、四条河原町のカフェで歓談。いろいろ勉強させていただく。